本の紹介


 東南アジア地域において、国境紛争・民族紛争という問題が非常に注目を浴びていると考え、『中国・ベトナム関係:中越紛争の歴史と国際環境』という本を読むのをお勧めします。中国とベトナムとの紛争問題は今まさにベトナムで最大の関心事になっているということで、この本を参考として、読んだら、理解を深められたと同時に、ベトナムのことも少しでも分かるようになると思われますからです。 

鹿沢剛著『中国・ベトナム関係中越紛争の歴史と国際環境』を読んで

 

1.本書について

本書は名前の通りに中国とベトナムの間の紛争の歴史と国際環境を主題とする図書である。著
者は中国とベトナムとの対立的な関係の根源、展開、展望などについて述べており、その紛争に
おける出来事について、第三者としての観点から両国の意図や狙いに対する意見を主張している。

ベトナムと中国は近隣の国であって、歴史上に両国の間に数多くの戦争が起こっており、ベトナ
ムと中国との対立は根深いものである。それが隠されていた対立の歴史と表面化した対立的な出
来事を分けられている。表面的に「社会主義兄弟国」1だといっても、中国とベトナムは歴史上に数々
侵略戦争と抵抗戦争があったのだ。つまり、「ベトナムの歴史は、中国の侵略とそれに対する抵抗
の歴史であった」2ということである。中国封建王朝時代から、どの時代でもベトナムの占領を繰り返
し、ベトナムが度々に中国の支配下に置かれていた。そのため、中国側はベトナムの支配の意図
を抱えている一方で、ベトナム側は反中国感情も根強いわけだと書かれている。それだけでなく、
ジュネーブ会議3で、中国がベトナムの利益をないがしろにして、妥協を強要した。結局、もっと有
利な解決案が要求できるはずのベトナムは十七度線で分割された。その上に、ベトナムの抗米戦
争において、一方では中国がベトナムを支援していて、一方では、戦争長期化を望んだのである。
アメリカがB52によるハノイへの爆撃の裏側には中国の意図があった。

隠されている対立が激しくなり、表面化されたことは少なくない。いくつか述べられているのは「西
沙と南沙の領有権争い」4 ソ連に対する両国の態度、華僑問題をきっかけにして、中国はベトナ
ムへの援助を打ち切ったこと、中国が仕掛けさせたカンボジアとベトナムとの紛争のことである。こ
れらが次のように書かれている。

第一に、両国が二つの群島の領有権を主張して譲らない。ベトナム側は国境協定を繰り返し提
案したものの、中国側はそれを忌避しているままで、決め手はないため、しかも両群島が太平洋と
インド洋を結ぶ通商上、軍事上、戦略上のである以上に、大量の石油資源を保有しているので、
領有権の争いが続けているという。第二に、両国の間にがソ連への態度の相違によって、鋭い対
立が生じた。具体的に言えば、ベトナムの方は協力したいのに対し、中国の方はソ連と戦いたい
のである。そういうわけで、中国は「反ソ統一戦線」に従わないベトナムを「敵」の戦線に見なしたの
だ。第三に、戦争後、社会主義化を進める段階で、ベトナムが南の華僑の商業を国有化した。そう
いうきっかけで、中国が華僑を帰国に呼びかけた。その一方で、国境を閉鎖し、「華僑の排斥」5を
口実に、ベトナムへの援助を打ち切る計画を実現した。第四に、ベトナムの社会主義建設を行うの
を妨害するために反ベトナム感情強いカンボジアを利用して、ベトナムとカンボジアとの紛争を仕
掛けたのだ。中国がカンボジアにテコいれして、ベトナムへのカンボジアの攻撃に武器、弾薬、資
金など次々と支援した。だから、中国の援助なしではその紛争は起こらなかったとベトナム側が考
えた。  

著者が中立的な立場から、中越対立問題を考察し、両国の関係の展開と展望を次のように指摘
している。中越紛争でベトナムがもぱっら「被害者」6 だったようにみえるが、見通しの誤りによる責
任もあったと考えられ、それに、急進線路を焦って、対外政策の中で、中国と関係を必要以上に
悪化させたことだと書かれた。著者の分析により、予想したのは両国の対立が継続していく可能性
高いのだ。戦争の場合に両国にも不利であり、かつてから重ねている対立の和解の可能性は少
ないというわけである。

2.問題点

本書を読んで、私にはいくつかの疑問点がある。以下のように、挙げたいと思う。

まず、中越の双方の対決を考察する際には必ずソ連・中国・ベトナムとの関係を考慮に入れるべ
きだと思う。中越の表面化した対立を分析した時、著者が見落とした問題はソ連への両国の姿勢
と思われる。なぜかというと、ソ連への対策の両国の相違の根本的な原因がその三者の利権益と
いう問題には隠されていると考える。ベトナム側がソ連と中国を社会主義の兄弟国と見なし、両者
から多ければ多いほど良い社会主義建設を進める援助を望んで、ソ連か中国かが先頭に立つの
を問題しないのだ。一方、中国がソ連の支配下にいる、すなわち、ソ連に対し独立したいから、「反
ソ連統一戦線」という対策を徹底に取っていたのだ。それに加えて、隣にある社会主義化を促進さ
せているベトナムは自分の将来の危害だと考え、ベトナムへの援助を打ち切り、ベトナムとカンボ
ジアとの国境紛争を仕掛けて、1978ー1979年にベトナムの国境を侵害したのだ。ベトナムがその
孤立の状態に挟まって、徹底的にソ連の同盟の対策に取り組んだ。そのため、抗米戦争中の隠さ
れた中越対立が戦争後に鋭くなったばかりで、表面化されたというふうに思われる。

次に、西砂と南砂の領有権についてだが、「西沙と南砂の領有権はあいまい歴史的経過」7 と書
かれているがそうではないと思う。「ベトナムの阮王朝時代から両群島の所有権を確立され、フラン
スの植民地になった以来、フランスが両群島を行政単位にして、支配した。フランスから独立した
後、両群島の領有権は正確にベトナムに属している」8。

最後に、中越対立のゆくえのところに、筆者が充分に分析しているが、本書を書いたとき(1978
年)から今日にかけて、対立の事情が移り変わったので、筆者の予想はある程度に確認できる。
1990年代に過去の対立を忘れ、ベトナム側から国交の正常化を行った。世界化時代の今におい
て、孤立の状態が不利しかもたらさないことを承知した上で、ベトナムが柔軟な外交対策を取って
いる。国の経済の発展に刺激を与えるために、いかなる国家と経済的に、社会的に協定しようとし
ているのである。中国にもその中に含まれている。

中越紛争は両国に限らず、それが東南アジアの共通の解決の難しい問題でもある。そういった
紛争は人民の平和な生活を損なったり、人々の生命を奪ったりしており、悲惨なことしかもたらさな
いのだ。例えば、ビルマとバングラデシュの間の宗教的な対立の要因からの国境紛争や、仏教と
イスラム教の宗教の対立が原因となっていたタイ南部とミャンマーとの民族・宗教紛争などである。
近年の東南アジアにおいて、最も長く続いているフィリピン南部の紛争も例外ではない。そういっ
た例にとって、世界や東南アジアの紛争が主に宗教的な対立、相違、衝突などに起因が見られる。
だが、中越の紛争はかつてから何千という年を亘って続けており、宗教の対立の原因と異なる紛
争なのである。紛争をまだ継続する限り、両国の経済発展、近隣の友好関係を損を与えつつける。
特に、べトナム側において、それが大きな妨害をもたらすに過ぎない。しかしながら、高度経済発
展あっての政治の勢力の膨大をしたい中国の意図が明らかに見られる。小さな隣国(ベトナムが
その中に含まれる)の経済発展を妨げるのは中国の対外の方針の一つであろう。つまり、中越の
は民族紛争、国家の権益から紛争なのだと思う。そのため、対立を終わらせる実現的な対策が見
つからないように思える。

3.結論

強い生き物が弱いのを食べると自然の生存規律により、世界各国の戦争がその規律に従うと思
われる。したがって、経済力、軍事力の強い国々が残りの国々を支配したり、束縛したりするのは
当然だと考えられる。そのために、強国が他国のことを問題視せず、いかなる手段で自国のことを
考慮する半面、安定な生活を維持したい、全世界の平和を願あいいるのは小さな弱い国々のほう
しかないと思うのである。

中越紛争問題がそういった原理に従って、継続している見通しである。経済力、軍事力などが均
衡的状態に達せないかぎり、大国(中国)、小国(ベトナム)の間には戦争が起らず、真実の和解
に至らず、双方的対立は続けていくと思うのである。
  
参考文献

•1979年、『30年をわたる中越関係の真実』、真実出版社、ハノイ、ベトナム(ベトナム語Sự
thật về quan hệ Việt Nam- Trung Quốc trong 30 năm qua, văn kiện bộ ngoại giao , nha xuất
bản Sự thật, Ha Nội, 1979)

•2004年7月第2『新しい時代』研究討論雑誌(ベトナム語:tạp chi nghien cứu va thảo luận:
Thời đại mới, số 2 thang 7 năm 2004)

•1979年、『ベトナムと中国の間の国境問題』、真実出版社、ハノイ、ベトナム(ベトナム語:
Vấn đề bien giới giữa Việt Nam va Trung Quốc, Nha xuất bản Sự thật, Ha Nội, 1979)

•1987年、鹿沢剛著、『中国・ベトナム関係:中越紛争の歴史と国際環境』、入門新書

注釈:

1。1978年、鹿沢剛著『中国・ベトナム関係中越紛争の歴史と国際環境』 、入門新書、20ページ

2。同書、21ページ

3。第一次インドシナ戦争終結にあたって、1954 年インドシナ問題解決のための会議

4。同書、49ページ

5。 同書、15ページ

6。同書、135ページ

7。同書、51ページ

8。1979年、『ベトナムと中国の間の国境問題』、真実出版社、ハノイ、ベトナム(ベトナム語: Vấn đề
bien giới giữa Việt Nam va Trung Quốc, Nha xuất bản Sự thật, Ha Nội, năm 1979,trang 17).

Phi Hoa